中京大学 情報理工学部 情報科学研究科

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田口 博久

教員紹介faculty
情報システム工学科 Information System Technology


理性的なものは現実的
ゲオルグ・ウィルヘルム・ヘーゲル 「法の哲学」序文より
田口 博久


ゼミ紹介

 ここ10年ほどずっと,その実存を追いかけているものがあります.まあここでは「彼」とでもしましょう.彼は「実存」すれども「その姿を見たものはいない」.彼はとても意味のある存在です,人類活動に関係なく.彼は,さまざまな実存様式を支配し,そして活動し,現世の構成そのものです.私は概念として,彼をよく想像します.情報理工学部がある11号館を見上げるとき,11号館 3階から陸上競技場を見下ろすとき,研究活動でアナライザが何かの現象を示唆したとき.何をおいても彼は,こうして思考活動を行うその瞬間にも,その実在が無ければ思考活動,人類の生存そのものが成立しないことを,誇示することなく示唆するのです.

 実存主義の真似事はこのくらいにしましょう.自分はヘーゲルやキルケゴールのように見事な文章を作れません.ところで 2011年は現代物理にとって記念すべき一年となったのでしょうか?光速度絶対がどうやら破られたようです. 2012年 1月には不確定性原理に根本的欠陥が発見されました.学生諸君にはこれが極端なまでの変革を生み出すとは,思い難いでしょう.あまりに巨大な曲がり角を通過していると,自分が今,曲がり角にいるのだということを気が付かないのです.

 みなさん10年前が想像できますか?みなさんがまだ小学生だったころですよね.私は今,この文書を東京から名古屋に向かう新幹線の中で書いています.ラップトップを WiFiにつなげ,この文章のタイトルを探しました. 2分もかからずウィキペディア@ドイツ語版で発見.英文注釈を参考にしつつ書き始めてそろそろ 10分.さあではもう一度みなさんに問いましょう. 10年前を想像出来ますか?10年前に,同様のことが出来ましたか?

 ラップトップ PCの小型化&高性能化&高速無線通信,ユビキタスネットワーク,仮想空間上にある多言語のサイエンクロペディア.10年前にはどれ一つなかったです.今ではすべてが当たり前.どうして当たり前になったのか?それは「彼」の使い方を,人類が少しだけ変化させたためです.

 さあ「彼の正体」を明らかにしましょう.紹介します,「Electron=電子」です.人類を含む全ての物質は電子によって結合様式を支配され実存が可能になります.電子は随分と長いこと,単に結合だけに使われてきました. 19世紀にマイケル・ファラデーによって電磁誘導が発見されるまで. 19世紀の科学革命と同じことが,今起きているのかもしれません.新しい「粒子」の「新しい使い方」を人類が手にすることによって. “Was vernunftig ist, das ist wirklich; und was wirklich ist, das ist vernunftig”(理性的なものは現実的で,現実的なものは理性的)

 当ゼミ研究は固体素子,特に情報通信に寄与するキーデバイスの研究開発を目的とします.化合物半導体を用いたナノスケールデバイス内部における電子の動作理論は,如何に電子が理性的に動作しているにも関わらず,まだまだ解釈され尽くされていないのです.では解明して行きましょう.不可視の電子を人為操作し全く新しいデバイスを探しに行きましょう.テクノロジーは無限にその形を変えて進化してゆくものです.電子と人間との関わりが変化するにつれて.それはまるで生き物のように.その生物の進化は現在進行形であり,このテクノロジーの巨大な曲がり角の中で進化過程に関与したいと考える皆さん, 2011年度から立ち上がる当ゼミ研究へ是非ともご参加下さい.

 FETに代表される固体素子の基本構造,動作原理,設計原理,回路応用手法,それらを理解するための基本的物理学などをゼミ形式で学び,半導体と通信技術の無限の可能性を体得してゆきましょう.



担当科目

確率・統計A&B,特別講義D



略歴

[学位]:博士(工学)2007年授与(東京理科大学)
[前職]:東京理科大学 助教(2007年〜2011年)
[現職]:中京大学 准教授 (2011年〜現在)