1月の経済研究所セミナー

要旨:
1月10日午前11時より、名古屋キャンパス14号館経済学部共同研究室において、国立環境研究所特別研究員である中村中氏を講師としてお招きし、経済学部附属経済研究所セミナーが開催された。タイトルは、「地域モデルにおける豊川流域の環境政策評価」。
愛知県東部に位置する一級河川の豊川は、古くより各種用水の水源として重要な役割を果たしてきた。しかし、過剰な採水による慢性的な水不足に加え、近年はダムなどの構造物建造による野生生物の生息環境悪化や、三河湾の水質汚濁等、多くの問題が懸念されている。そこで中村氏は、豊川流域において環境経済モデルを構築し、社会経済活動と環境負荷との関係をシミュレーション分析された。その結果、複数の施策において、流入汚濁負荷を低減させつつも地域GDPを増大可能であることが確認された。一方、農業用水の供給量削減については極めて限定的な効果に留まっており、従って汚濁負荷削減施策としては有効である水不足解消には繋がらないと判断された。
当日は、愛知県企業庁で実際に豊川用水にかかわっていらした方や、水を研究している大学院生はじめ東京等からの研究者の参加も得て、今後につながる有意義な研究セミナーとなった。
(経済学部教授 中山惠子)

要旨:
オーストリア経済研究所のMichael Peneder氏を招き、競争と技術革新について講演をお願いした。競争と技術革新の関係は重要な研究テーマである。
氏らは、スイス経済研究所の企業パネルデータをもとに競争とイノベーションの実証研究を行った。競争の程度がR&Dの動機付けに変化をもたらし、R&Dの増大がイノベーションの成果を生み出し、イノベーションの実現が競争の優位性をもたらす。これら競争、R&D、イノベーション成果が相互に関係する。その関係を技術ポテンシャル、需要要因、資本装備率、人的資本、企業規模、存続年数、輸出、外資支配関係、おとび産業効果や時間効果などで説明する連立方程式モデルを構築し、3段階最小二乗推計を行った。その結果、競争の程度とR&Dとは逆U字型の関係を示すこと。この関係は、創造的企業グループのほうが追従型企業グループより顕著であること。さらにR&Dと競争はイノベーション成果を経由して負の関係をもたらすので、両者の関係から、競争とR&Dの間の動学的調整過程が分析できる。そこから、すでに競争が激しい市場においてさらに競争を激化させる政策はイノベーションの実現を抑制することになり、逆に競争が少ない市場で競争を促進することはイノベーションを誘発することが期待されることが示された。
報告の後参加者と活発な質疑応答がなされた。
(経済学部教授 山田光男)