Discussion Paper No.1602

Abstract :
2000年から2010年までの11年間について、全国と47都道府県の産業別合計特殊出生率(TFR)を同居児法を用いて推計した。 推計した結果、日本の出生状況は非就業者によってTFRの総数の数値を維持することができている。 また、2000年から2010年の年齢別の推計で晩婚化の進展が示されている。産業別では、 農林水産業、公務、建設業、電気・ガス・熱供給・水道業、福祉関連のTFRが高い。 TFRが低い産業は、卸売・小売・飲食店、宿泊業、運輸業である。 TFRの高い産業と低い産業について、それぞれの賃金、就業規則、労働環境などを検討することによって、少子化対策への課題も明らかになる可能性がある。 就業人口が多く、TFRの低い産業部門について出生数を上げる方策に取り組むことが少子化対策の1つになるであろう。 産業別TFRが把握できることにより各産業部門の女性の労働環境の改善や女性の労働選択、さらには少子化問題を検討する際の情報になる。
次に、地域別のTFRのデータを用いて集積経済の関係を検討した。 Sato Y(2007)、Morita T, Yamamoto K(2014)では集積経済(高い人口密度を持つ)のある地域はTFRが低くなり、集積経済の低い地域はTFRが高くなることが示されている。 本研究の結果でも、電気・ガス・熱供給・水道業、公務以外は整合的になっている。
最後に、様々な集積経済の指標について産業別TFRを検討した。 先の理論と整合的であったのは、雇用数と事業所規模の立地指数(製造業)、可住地面積あたりの工業統計従業員数(製造業)、 特化型集積指標、都市型集積指標の4つである。 公務のTFRが他産業とは異なり理論通りではない。 このことは、民間企業で働く環境が公的機関で働く環境により近づくことで、地域差が狭められる可能性を示しているのかもしれない。