日付 | 2019年2月8日(金) |
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講演者 | 弁護士(愛知県弁護士会所属) 熊田 均 氏 |
タイトル | 「判断能力が不十分な高齢者・障害者をめぐる最近の法的話題~民事法関連について~」 |
場所 | 中京大学名古屋キャンパス9号館第1会議室 |
法学研究科では、2019年2月8日(金)15時より、名古屋キャンパス9号館第1会議室において、弁護士の熊田均氏を講師にお招きし、「判断能力が不十分な高齢者・障害者をめぐる最近の法的話題~民事法関連について~」と題する学術講演会を開催した。
ご講演は、いわゆる「社会福祉基礎構造改革」による「与える福祉」から「選択する福祉」への移行(福祉の契約化)や、血縁や地縁による支援が不十分・不可能になっている状況から生じる3つの法的問題を取り扱うものであった。具体的には、①欠格条項違憲訴訟、②JR東海訴訟事件判決、③身元保証ビジネス問題が取り上げられた。
①欠格条項違憲訴訟は、一定の職業資格について、成年後見制度を利用した人は自動的に欠格条項に該当し、その資格を失うとする欠格条項の合憲性を争う裁判である。現在、警備業法に関連して訴訟が提起されており、選挙権欠格条項に関する2013年の東京地裁判決や、いわゆる「欠格条項の一括削除法案」の動向も踏まえて、講師の分析や見解をお話しいただいた。
②JR東海訴訟事件(最高裁判決は2016年)は、判断能力が不十分な人(要介護高齢者)が生じさせた損害に、誰が責任を負うのか(家族は責任を負うのか)が争点となり、その判決は法曹界だけでなく世間の関心を集めた。講師からは、事実関係も詳細に踏まえたうえで、各審級の判決を分析していただいた。純粋な法的観点からの議論とは別に、価値観の問題もかかわる「難しさ」がある。
③身元保証ビジネス問題は、日本社会のいろいろな場面で求められるいわゆる「身元保証人」を、少子化・核家族化のなかで用意できない人が増加し、「入院」「入所」「入居」の困難に直面している状況で生まれた「身元保証事業」にかかわる。医療・介護施設では、身元保証人の不存在はサービス提供を拒む理由にはならないことは繰り返し通知・確認されているところであるが、病院・施設は身元保証人を求めているという実態がある。講演では、身元保証事業との契約に関わる問題点や医療同意を中心に、ご説明いただいた。
高齢化への対応という現代的かつ喫緊の課題を多様な側面から扱ったご講演に対し、実定法的観点にとどまらず、法史的観点からも質問や意見が出され、活発な議論が行われた。
(法学研究科主任 柴田洋二郎)