公開講演会

年1回、経済・企業の専門家を招請し、今日的なテーマでもって公開講座を開催し、広く一般市民、学生の参加をえている。最近時に開催された研究会は次の通りである。

稲増 美佳子

稲増 美佳子氏

「VUCA時代に求められる経営」

日 時:2016年11月1日(火)15:00~16:30
講 師:稲増 美佳子氏

11月1日、15時から企業研究所公開講演会が、中京大学名古屋キャンパス、センタービル、山手ホールにて開催された
講師の稲増美佳子氏(ヒューマン・リソース・インスティテゥート代表取締役社長)はサンダーバード大学院で国際経営学修士号を取得、同グローバル・カウンシル・メンバーで、2005年からはビジネス・ブレークスルー大学院大学教授を務めている。著書も、『戦略構想力を鍛えるトレーニングマーケティング』とか、『マーケティング戦略策定シナリオ』、『リーダーシップのノウハウドゥ』、『人をあきらめない組織』、『マザーテレサ日々のことば』など多数である。
稲増氏は、現在は、VUCA時代であるという。不安定「volatility」、不確実性「uncertainty」、複雑「complexity」、曖昧模糊さ「ambiguity」のこの4つを合わせたVUCAということばの意味と、そういった時代におけるその経営について語る。
こういった時代には「そんな会社あり得るか」というぐらい指数関数的に飛躍するユニコーン企業が登場し、人間の知能の総和を超えるシンギュラリティが重要となる。経営者、技術者には野心的な変革目標が一番大事であるが、そのためには、内部の経営資源をどう活かすか、経営資源とその企業が力を出し合っていけるかが勝負だという。
最近、日本は、ベトナム、中国、チリ、バングラディシュ、ブラジル、インドネシア、ウクライナといった元気な新興国と比較して、相対的に地位が落ちていることが示される。また欧米と比較して受身であり、発信力が足りないことが指摘される。
が、伝統的に信頼を大切にして、「三方よし」の精神などを大切にしている日本には「希望」が持てるという。日本発信のSushi、Tofu、Kaizen、Keiretsu、Mottainai、Omotenashiなど、国際語として使われていることが指摘される。すしや豆腐などもヘルシーフードとして、世界標準となる。「おもてなし」や「我慢」「仕方がない」も外国人記者を感動させるコンセプトであるという。「シェア」「サステナビリティ」「CS」「ES」なども日本の社会が伝統的に有していたという。
稲増氏はVUCAワールドで勝ち抜いていく要件として、今、日本の経営者が、自分たちが持っている強味を、もう一回自分たちで気づいて、掘り出して、宝物を探して、改めて自分の会社は何のために存在しているかを問い直すことであるという。何のためにわれわれは存在しているのか、野心的な変革目標に変えることのできるものをイメージしよう、対話しようと未来へ向けて提案する。
先の見えないVUCA時代をどう生きるか、来るべき社会を展望して企業経営していくために力強い声援を送られているようで、聴いていて希望が湧き、元気になれるご講演であった。
(企業研究所所長 中西眞知子)

白岩 千幸

白岩 千幸氏

「中国経済の見通し―2020年の中国―」

日 時:2015年11月19日(木)15:00~16:30
講 師:白岩 千幸氏

11月19日、15時から掲題の公開講演会が名古屋キャンパス、センタービル、ヤマテホールにて開催された。
講師の白石千幸氏(SMBC 日興証券投資情報部)は、ハーバード大学、ケネディ行政学大学院修了ののち、国連の開発機関や英国の投資銀行など、豊富な国際経験があり、わが国でも有数の中国経済の専門家である。去る8月の「チャイナ・ショック」以来、掲題のテーマがわが国においても衆目を引いていることもあり、一般市民の方々や金融関係者を含め例年を上回る聴き手を得ての開催となった。
白岩氏は、建国以来の経済政策、ならびに都市部・工業地帯と農村部という、二層連関を基軸とした従来の発展モデルを解説したうえで、労働需給にかかる「ルイスの転換点」の通過ならびに「就労人口比率」の構造的低下により、中国の経済成長率の逓減は避けられないとした。その一方で危惧されているような「バブル崩壊」ではなく、中央(共産党)にコントロールされた経済発展は今後も続く(成長率はおおむね5年で1%ずつ減速)、と見る。
経済の大きな混乱と、その中で尖鋭化するであろう貧困層・農村部の不満こそは、共産党支配にとっての最大の脅威であるから、なんとしても回避されるであろう、といった氏の説明、また経済発展の具体的新機軸として「中国製造 2025」などの紹介は中国の政情への造詣と人民銀行などへの豊富な実地ヒアリングをも反映した、情報的価値の高いものであった。
(企業研究所所長 由里宗之)

石渡裕

石渡裕氏

和田勝

和田勝氏

寺岡寛

寺岡寛氏

「中小企業運動と中小企業政策」

日 時:2014年10月23日(木)
講 師:
神奈川中小企業家同友会代表理事・石渡裕氏
愛知中小企業家同友会理事・政策委員長・和田勝氏
企業研究所、経営学部・寺岡寛教授

10月23日、掲題の公開ミニシンポジウムがヤマテホールにて開催された。例年この時期、外部講師による「公開講演会」を行うならわしであるが、本年は消費税率引上げ後の中小企業現場の実態に関し異なった地域発で複眼的な視点からの議論を、との趣旨でシンポジウム形式としたものである。
寺岡寛教授(企業研究所、経営学部)のコーディネートのもと、神奈川中小企業家同友会代表理事の石渡裕氏(中小企業家同友会全国協議会の政策委員長)、および愛知中小企業家同友会理事・政策委員長の和田勝氏(同、政策副委員長)が登壇した。 両氏からは、同友会独自の全国的な、また愛知県の中小企業の景況調査に基づく実態的報告がなされ、政府・日銀の言う消費税率8%引き上げ後の景況V字回復は起こっておらず、むしろL字型の低迷が懸念される、との所見が示された。
しかしながら両氏は、消費税率引上げさらには再引上げ(10%へ)という政策に対する苦言や反対の弁を続けるのではなく、中小企業家同友会の「自ら提案する」伝統に則り、どのような中小企業政策が今求められているのか(2010年閣議決定「中小企業憲章」の諸理念の政策的具現化など)、そのために同会がどのように動いているのか、理路整然と語り聴衆に訴えることに持ち時間の多くを費やされたことが印象的であった。
(企業研究所所長 由里宗之)

清水功哉

清水功哉氏

「デフレ脱却は実現するか-日銀「異次元緩和」の狙いと威力」

日 時:2013年11月28日(木)
講 師:日本経済新聞編集委員・清水功哉氏

日本経済新聞社編集委員の清水功哉先生をお迎えして、新1号館172教室にて、講演会が行われた。 清水先生は、旧大蔵省と日銀を記者時代から継続して取材してこられた方である。約1時間余りにも及んだ講義は、かつての記者時代の地道な取材経験に基づいたエピソードをちりばめつつ、一般視聴者にもわかりやすく、根本的な問題のありかを示していただくものとなった。私自身が大いに勉強となったのみならず、アンケートを通じて、一般市民の方にも、真に印象深いものとなったことが確認できた。 講演の焦点となったのは三つの問題であった。一つ目は、現在の日本経済がこの20年近く引きずっているデフレという現象が、いかなる本質を有するのかという問題である。物の値段が下がるのは良いことのように思えるが、企業にとっては業績が上がらず、新規採用が控えられるために、若者に大きなしわ寄せが及ぶ点で、世代間格差を広げることになることが最も大きな問題であることを簡単明瞭に切れ味鋭く語られた。二つ目は、「異次元緩和」と呼ばれる金融政策が可能となったのは、旧大蔵省の主流ではなく国際金融畑を歩んでこられた黒田総裁を迎えたためであり、日銀の伝統的な政策ともいうべきインフレを第一に懸念するというアプローチを抑えることができたゆえであったという点である。三つ目に、現在の好景気によって消費が拡大しているといっても、都道府県別の消費拡大率において公共事業の集中する沖縄、および、円安効果でアジアからの観光客が集中する北海道が消費を引っ張っていることに象徴されるように、「戦後好況」期に見られたような三種の神器が大都会から消費を拡大していくという従来までのパターンとは、全く別の要因からの拡大であるという点であった。放送大学や企業研究所に関心を寄せる沢山の市民の参加が見られ、毎回このセミナーを楽しみに来てくださる方がいるという手応えを感じた、真に充実したセミナーであった。

城山智子

城山智子氏

「上海経済の170年-都市開発の問題を中心として-」

日 時:2012年11月8日(木)
講 師:一橋大学大学院経済学研究科教授・城山智子氏

11月8日、城山智子氏(一橋大学大学院経済学研究科教授)を招いて、公開講演会(論題「上海経済の170年」)が開催された。 論題はアヘン戦争後の1842年、上海が開港されて今年が170年にあたることを示す。1978年からの中国のいわゆる改革開放から30年以上が経過し、この年月は中国が一時的に「閉じた」中華人民共和国成立(1949年)から1978年までに期間を超えたことになる。中国最大の経済都市、上海の変容が、国際的に開かれた戦前と1978年以降を対比的に論じられた。その際、戦前期は外灘を含む租界地区と1990年以降の黄浦江を挟んだ浦東地区とを対比され、とくに土地所有を焦点に分析され、1990年以降の歴史的特徴を浮かび上がらせた。戦前期の租界地区の制度は外国との不平等条約の結果として生まれのであるが、制度の運用の過程で、一種の慣例として租界の私的な土地所有権の安全性が確保された。その所有権は単に外国人に対してだけではなく、租界地区に移住してきた多くの中国人にも開放された。その上に土地を担保にした金融機関からの不動産担保金融が産業、企業の資金調達にも寄与したことが指摘された。これに対して改革開放後、さらに天安門事件以降、それまでの中小企業、郷鎮企業から国有企業が経済発展の主要な担い手に躍り出てきた。その象徴が上海の浦東地区の摩天楼のような高層ビルディング、金融街であると指摘された。最後には最近の中国経済に関する話題書、『赤い資本主義』にも言及された。例年もまして市民の参加が多数を占め、興味ある講演に対して、会場から鋭い質問がなされ、盛会のうちに講演会を終えた。

奥村宏

奥村宏氏

「株式会社の危機」

日 時:2011年11月7日(月)
講 師:会社学研究家(商学博士)・奥村宏氏

企業研究所は「株式会社の危機」というテーマで在野の奥村宏氏に講演していただいた。奥村氏はまず3月11日の福島第一原発事故および事故処理を株式会社、東京電力の提起した問題として設定し、法人としての責任、株主としての責任、債権者=銀行としての責任という視点から、原子力損害支援機構の問題点が指摘された。つづいて、株式会社を歴史的に展開され、会社法確立期では株主有限責任の特異性が指摘され、巨大株式会社が形成される20世紀の変わり目では持ち株会社法=ニュージャージー州法が強調された。1970代以降は、規模の経済や範囲の経済の限界によって巨大株式会社の危機がはじまり、その危機を突破するために経済の金融化が進行しているとされた。最後に東京電力への対応策としては国有化ではなくその解体・再編が提起された。奥村氏の講演に対して、巨大株式会社の危機であっても株式会社の危機ではないのではないか?東京電力の問題は所有の問題ではなく独占の問題ではないかいう質問、意見が出された。市民、学内の学生、教員など60名以上が出席し、熱心に聴講した。