法実践プログラム(LPP)

法実践演習Ⅰ-1(実務家と民法を考える)

何を学ぶのか、誰と学ぶのか、どう活かすのか

理論と実践で活きた学問を

理論と実践を両立し、活力に満ちた学問の場を作りたいという思いからこの授業を立ち上げました。2011年度から開始したこの授業ですが、早くも9年目を迎えることができました。2019年度の活動実績の報告をさせて頂きたいと思います。たくさんの応募があり狭き門となりました。

プログラムの内容

2019年度も民法教員である濱崎がコーディネーターとして担当し、弁護士の古賀照平先生と協力して授業を担当しました。近時に下された重要な民事判例をピックアップし、研究者と実務家の二つの目線で判例を素材に次のような流れでディスカッションを行いました。

  1. 裁判を理解するための資料を読むことを一からレクチャーします。
  2. 裁判の対象となる紛争の事実関係を図示化しながら整理します。
  3. 原告、被告それぞれの立場に立ち、どのような主張が可能かを自分の頭で考え、意見を発表します。
  4. 実際の判決文を読み、関係する条文の解釈・条文の理解の方法につき学びます。
  5. 意見を交換し、望ましい解決とは何かについて意見交換を行います。

どんなことが学べるのか?

  • 生きた法の使い方を知ることが出来る
  •  例えば、保証人になったけれど保証契約をなかったことにできるかどうかについて、実際の判例を扱いました。教員が理論面での仕組みを説明しました。弁護士の先生からは取引の仕組みや訴訟での証明の方法など実社会における法の使い方を、実務家ならではの観点から説明をして頂き、普段の法学部の講義ではなかなか知ることができない知識を得ることができました。
  • 問題解決能力の向上
  •  答えは一つとは限りません。結論とその結論に至る理由が説得的であることが重要です。教員側のメッセージを理解してくれた受講生が、ヒントのない状態で「私は○○という人を、民法○○条を用いて、損害賠償を請求します。」と、ゼロから自分の思考を論理立てて、オリジナリティにあふれ、誰もが納得する意見を述べてくれました。
  • 業務遂行能力
  •  模擬裁判で現役の弁護士と向き合うためには戦略が必要です。どんな主張をするといいのでしょうか。どんな反論がくるのでしょうか。皆で考えなければなりません。模擬裁判で説得的な主張をするためには、どんな作業が必要で、それをいつまでに行えばいいのでしょうか。自分たちの思いを、「業務」に進化させながら実現していくことができます。

模擬裁判

2019年度もメインイベントの模擬裁判を無事に終えることができました。今年度の模擬裁判のテーマは「暴行現場に居た少年は被害者を救済する法的義務を負うのか?」です。

少年Aが複数の少年から暴行を受けて死亡したことについて、暴行に加担した少年が法的責任を負うことはもちろんですが、(暴行には加担せずに)暴行現場に居合わせた少年達がAを救護するための措置を執るべき法的義務を負っていたとはいえないとされた実際の事例をベースに模擬裁判を行いました。訴状を作成するところからスタートし、訴訟形式で意見を戦わせました。それぞれの主張がどれだけ説得的であるかを競い、裁判官がジャッジを行いました。今年度も白熱した裁判が繰り広げられ、手に汗を握る互角の戦いとなりました。

まとめ

今年度も深く判例を理解することができました。実践的に「誰が、誰に、どんな理由で、どのような救済を求めて」訴えを提起するのかを議論していく中で、自分の力で考える重要性を学びました。また、私達がなかなか知ることができない実社会の経済の仕組みと法律の関係や、訴訟における証明の意義など実務家教員の担当するプログラムならではの生きた知識を身につけることができました。

受講生の感想

  • LPPとはどんな授業だろうと興味を抱いたので参加した。結論として非常にためになる素晴らしい授業だと感じました。法学部で法律を学んでいるときに、この学んだ知識をどのように活用すればよいのだろうかという気持ちになったことがある。それを解決してくれるような授業でした
  • LPPをやりきって達成感を得ることができたと思います。今までの授業とはまるで異なる模擬法廷でしたが力を合わせてやり終えたと思います。何度も図書館に集まり、判例の研究や読み込みを進め、膨大な資料の中から使用できそうな言い回しを抜き出すなど事前準備を周到にした。来年は傍聴席で裁判を見学する形で参加したい。
  • 今回の模擬裁判の準備を通じて、判例を色々と読み進めていく中で、結論へたどり着く過程の重要性をひしひしと感じました。難しかったけれど、振り返ってみると楽しかったようにも感じます。
  • こんなにも本気で学び、裁判を行うことができたことで自信とともに今後の目標もできました。こんなにも達成感、充実感のある授業に参加できたことを嬉しく思います。本当にありがとうございました。
  • 模擬裁判が終わり、振り返ると、私が求めていたものはすべて得ることができたと思いました。準備段階という目に見えにくいところこそが核であり、全力で、妥協なく取り組みました。時間を忘れて物事に取り組むというのは久しぶりでどこか満足感がありました。この時間は私にとって財産になったと確信しています。これを思い出だけにせず、学んだことをきちんと活かさなくてはならないなとある種の責任のようなものを感じました。
  • 今回のLPPにおいて一番学んだのは、「インプットとアウトプットの均衡の重要性」である。どちらが欠けても主張は通らない。両者の均衡を保つことで主張に説得力が生まれるのだ。

担当者の感想

  • 今年度も無事に模擬裁判を終えることが出来たことに安堵しています。受講生を支えて頂いた古賀照平弁護士、裁判官役をお引受け頂いた杉島先生、柴田先生、大原先生に心より感謝申し上げます。受講生の皆様、ありがとうございました。

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