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4専攻

国際文化専攻

学びのガイダンス:文化人類学を学ぶ人のために

まず、次の文章は正しいか間違っているか、○×クイズをやってみてください。
①子供の頭をなでたら、その子の安全を気遣って親が激怒する人々が住んでいる地域がある。
②21世紀に入り、バチカン(カトリック教会の総本山)は悪魔祓い大学を開校した。
③死者が安らかな死後の世界に到達できるよう、その骨の扱いに気をつかう人々が存在する

①大陸部東南アジアのある集団には、子供の守護精霊が頭に宿るという考えがあり、頭をなでる行為はその精霊をふり払い子供に危害を加える行為とみなされるため、非常に嫌悪されることがあります。②カトリックでは、神の存在を示すために悪魔も認められています。それにとり憑かれて精神錯乱に陥る症状は、迷信や過去の遺物ではなく、ヨーロッパ世界においては逆に今世紀に入って増大している深刻な問題です。③日本を含む多くの集団では、肉体は腐敗しても骨は残るので、死者の象徴として重要視されます。死者供養イコール遺骨の適正な祭祀である場合も、少なくありません。

というわけで、全部○です。暮らしの組み立て方について、人間そのものに対する考え方について、生と死の境界について、人類はさまざまなやり方をもっています。互いに異なるやり方同士は、一見変わったものとして互いを認識します。このように、さまざまな意見や主張、こだわりなどにあらわれる生活の営みは「文化」とよばれ、それによって人間の生活が成り立ってと考えるのが、文化人類学の基本立場です。

文化人類がは異文化理解の学であるとよく言われます。しかし「彼ら」の文化を理解するためには、「われわれ」の感じ方考え方をも顧みなければなりません。上記の○×クイズでも、①②はたしかに異文化についての叙述ですが、③はわれわれ自身についてのことでもありました。つまり文化人類学がすすめるのは、一方向的な理解(の押しつけ)ではなく、異文化をもつ「彼ら」を「われわれ」自信を映し出す鏡とし眺め、究極的には自己理解をも促進するような対話的理解です。一見風変わりな活動や観念をもった「彼ら」に対する関心と同じウエイトで、自分自身の暮らしをより広い視野から見つめ直したいという欲求は、文化人類学の核心です。

「文化」という営みを通して人間そのものを対話的に捉え考え直すために重要なステップは、生活の現場でじっさいに生きた文化を見開きして学ぶことです。現場での暮らしに身を沿わせながら、さまざまな活動実態や態度や意見になるべく多くふれる方法はフィールドワークと呼ばれ、文化人類学ではもっとも重視されています。まずはフィールドに身体を運ぶこと、そして現場で感覚や感性をフルに動員して、問題を見つけてくることが肝心です。自分の身体と頭をシンクロさせ、フィールドと書斎を行ったり来たりしながら、誰かの言ったエラソウなことに左右されず自分自身の見聞にもとづいて自分の頭で考えること、文化人類学を学ぶためには、そのようなプロセスが重要なのです。