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氏 名 |
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上芝 智裕 (研究代表者) |
酒井 恵美子 |
森山 真吾 |
東山 京子 |
檜山 幸夫 |
宮田 義郎 |
北川 薫 |
野口 典子 |
河村 典久 |
フセイン・ザナティ |
調査期間 : 2024年度から3年間
調査場所 : 主に豊田市内
本研究プロジェクトは、2021〜23年度に実施した同名のプロジェクトの成果を踏まえ発展させるものである。
持続可能社会とは、「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような社会活動が行われている社会」と言われている。現状での「持続可能社会」に関する研究は次の点が大きな問題であると考えられている。
①戦争、宗教問題や貧富の格差問題を含む地球の人口に関する問題
②温暖化問題やプラスチック問題に代表される地球環境への負荷削減の問題
③医療と持続的農業,持続的水産業,持続的林業を模索する食糧供給に関する問題
④持続可能エネルギー、遺伝子資源など未利用資源の利活用を含む持続可能な開発に関する問題
現在このような多岐にわたる問題の解決が必要とされ、各領域の研究者から新産業の育成を目指す行政機関、産業界まで世界中の関心を集めているといっても過言ではない。その一方で、「持続可能社会」とはどんな社会なのか、そこにある主体の視点からそのような社会の姿を描くことができないでいる。
そこで、それぞれが個別の問題を解決していけば「持続可能社会」を実現できるという発想から離れ、まずは「共同体」と共同体を構成している「人」に着目し、地域社会の自然環境、社会システム、歴史的背景、文化的背景について分析する。そして、先に述べた4つの点がどのように満たされ、あるいは満たされずに問題点として残るのかを考察するための枠組みを作成し、地域研究を行う。
2021年度研究を立ち上げた時は、それまで社会科学研究所で蓄積してきたこの課題に関連するいくつかの研究を「持続可能社会」実現のための研究として整理し、最初の研究として持続可能社会の一つのモデルとなる地域を対象として、自然環境、社会システム、歴史的背景、文化的背景を探り、持続可能社会の姿を構築することを目指した。
2022年度はより地域社会と連携した実践として豊田市の自治体や民間企業、およびバンコクの学校との連携による、生協食堂食品残渣堆肥化のプロジェクトが発展し、2023年には食資源の循環による環境保全のネットワーク構築に地域住民の参画も得た。
2024年度からのプロジェクトではこのネットワークを地域に根付いた活動に育てていくことが重要な目標である。また2021年から豊田市とも連携して開発してきた、日常生活での創造的行為による教育プログラムを、2024年度からはトヨタ自動車による社会貢献活動とも連携して社会貢献体験によって社会的視野を拡張することを目標にする。
さらに、函館、札幌、名古屋、和歌山などでの地域実践と情報交換しながら、日本の社会における持続可能性を在り方を探っていく。
●研究会の開催
本プロジェクトは人文・社会科学と自然科学の研究者が共同で行う。2024年度は、4回程度の研究会を開催し、現在進行中の研究についての成果を共有し、意見交換からそれぞれ研究の方向性を探る。
●食資源循環による環境保全
豊田地域では、2022年に開発した中京大学豊田キャンパスの学食から出る食品残渣の堆肥化システムを活用して、2023年度に豊田市と中京大学の連携事業として地域住民も参画したネットワークにより、大学と地域住民、自治体の連携をより緊密にし、食資源循環を地域に定着させていくことを目指す。あわせて2022年に豊田キャンパス内に確保した畑用地での食料生産をより広範囲に拡張する。
[連携先] 豊田市循環型社会推進課、環境学習施設エコット、Darunsikkhalai School of Innovative Learning(バンコク)
これに関連して、下記2件の実験・開発案件も想定している。
○炭の活用による堆肥化の実験
[連携先] 竹炭プロジェクト
○ソーラーエネルギーによる堆肥化システムの開発
飲食店やホテルなどでの食品残渣の堆肥化を想定し、ソーラーエネルギーにより運転する堆肥化システムを開発する。
[連携先] 松原電気(豊田市)
●日常生活における創造活動の促進
2023年度までの研究により、生態学的・歴史的な観点から持続可能社会にとっての重要性が明らかになった、日常生活での視野の拡大と社会貢献への動機づけが、日常の創造活動により得られる可能性が示唆された。このことから、地域社会での日常生活における創造活動を促進することによって、より持続可能な行動選択を生み出す仕組みを構築することを目指し、下記の取り組みを行う。
○日常生活での創造的行為による社会貢献を体験する教育プログラム
○自治体と地域の若者が連携するコミュニティーデザインの実践
[連携先] 豊田市循環型社会推進課、おいでんさんそんセンター、トヨタ自動車
●実践に基づいた理論構築
2023年までにまとめた、アージ理論による文明論と創造性の社会的意味についての成果に加え、道具作りとフローの関係性、および人と人がつながることによる環世界の拡張とそれにともなう生活世界における意味の構築の視点から、現在までに蓄積した実践データを見直すことで、持続可能社会の在り方についてより包括的な議論を展開することを目指す。
[ 参考文献 ]
Miyata, Y., Ueshiba, T., Anzai, T., Motoki, T.(2023) Co-Creation with AI in Cambrian Games; Human Transformation in Media Art. The 10th International Conference on the Histories of Media Art, Science and Technology
上芝智裕 宮田義郎(2023). 芸術におけるAIとの共創 - カンブリアンゲームでの実践. 2023年度日本認知科学会第40回大会論文集, 839-842.
宮田義郎 鈴木真帆(2022). 創造性の社会的意味. 認知科学, 29(2), 281-284. https://doi.org/10.11225/cs.2022.014
宮田義郎(2021). 戸田正直の文明論の再構築:生態学的検討 認知科学, 28(3), 351-363, https://doi.org/10.11225/cs.2021.032
宮田義郎(2020). 社会実践ラボラトリーの理論:人類のデザインの価値観の歴史を踏まえて デザイン学研究 特集号, 27(2), 48-55. https://doi.org/10.11247/jssds.27.2_48
Miyata, Y., Ho, A.(2017). World connection project: Hong Kong youths meet nature in Japan. International Journal for Educational Media and Technology, 11(1), 108-115.