教授
小川 和也(おがわ かずなり)
教授 小川 和也(おがわ かずなり)

自己紹介/プロフィール

専門は、日本思想史・日本近世史。研究テーマは、近世の政治思想史、越後長岡藩をフィールドとした藩政改革史、および、鞍馬天狗という大衆小説の英雄から戦前・戦中・戦後の知識人と国民意識の変化を探ること。思想史の方法として、書物と読書の観点から人々の意識・思想に迫る。

学会・公職活動

愛知県史近世史部会調査執筆委員、歴史科学協議会、書物・出版と社会変容研究会、日韓相互認識研究会、岡山藩研究会、北東アジア総合研究所研究員など。

主な著書・論文

『牧民の思想―江戸の治者意識』(平凡社選書、2008年)
『文武の藩儒者 秋山景山』(角川学芸出版、2011年)
『鞍馬天狗とは何者か―大佛次郎の戦中と戦後』(藤原書店、2006年)
『儒学殺人事件 堀田正俊と徳川綱吉』(講談社、2014年)
『大佛次郎の「大東亜戦争」』(講談社現代新書、2009年)
「越後長岡藩儒・秋山景山の天保改革構想」(『歴史評論』717、2010年)
「「御家」の思想と藩政改革―越後長岡藩牧野家の「常在戦場」をめぐって」(『歴史評論』754、2013年)
「19世紀の藩学と儒学教育-越後長岡藩儒・秋山景山『教育談』の世界-」(趙景達編『儒教的政治思想・文化と東アジアの近代』有志舎、2018)

ゼミ紹介

Seminar
小川 和也ゼミ
このゼミナールは日本思想史をテーマとしている。「思想史」とは人々が何を考えてきたのかを考える歴史研究である。対象は一握りの天才の著作だけではない。民衆の意識・思想も対象である。思想史の対象を飛躍的に広げたのが、書物による思想史である。人々の知識や意識、思想は江戸時代の出版というメディアの登場により激的に変化した。書物による思想史は、情報や作品の送り手よりも、書物の普及、集め方、読まれ方、つまり、読者・読書に注目する。読書は個性の数だけ存在する。出版というメディア、書物・読書に着目することで、ある時代や社会の常識・通念がいかにつくられたのかを解明すると同時に一人一人の個性や主体形成過程を追うことができるようになった。このゼミナールでは、思想家のみならず、武士層や民衆の意識・思想にも注目する。
また、「思想」は、個人だけではなく「集合心性」「社会的想像力」「時代の精神」といった集団・群衆・大衆の意識や思想もあれば、たとえば「監獄」の「思想」のようにモノにまつわる思想がある。もちろん、モノ自体が思考するのではなく、モノに人間の意識・思想が反映しているわけである。そうした意識・思想には現代からみると、奇妙で不合理にみえるような断絶性をもっているものがある。歴史は単線的に進むのではなく、そうした断絶面をふくみこみながら複雑な現実をつくりだしている。マイノリティ・アウトロー・敗者といった社会的「周縁」性と、人々の「日常」性との関係性に注目して、歴史の全体性と深い構造をつかみだすことも重要である。
安丸良夫の論文をベースとして「共通分母」をつくり、さまざまな思想史論文の輪読、史料講読によって「共通分母」に厚みを加えていきながら、各自の研究報告を活かし、多様性を作り、独創性や「個性」を育むようにしたい。ゼミでなにかを「与えられる」のを待つのではなく、ゼミを各自の知的営為を積極的に反映させる場としたい。

ゼミ卒業合宿2017年度・奈良興福寺